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タイトル未定サイズ小説1話

初公開です。
*****
ここはどこだ。
俺は誰だ。
……まさか実際にこの記憶喪失テンプレを使うときが来るとは思いもしなかった。
 本当なら苦笑の一つ漏らしたいところだが生憎笑ってられない状況なので自粛することにする。
 ここは恐らく森の中。 恐らくというのは……まあそれはいい。
 とにかく適当に歩き回っても仕方がない。俺は木の根元に座り木漏れ日を浴びながら覚えてることをポケットに入ってたメモ帳に記すことにした。
 一般常識は覚えている。そして現代に生きる日本人であり、高校を無事卒業したのも覚えている。
 文字は…問題ない、メモ帳に書いてる時点で漢字ひらがなカタカナは覚えている、間違いない。
「……でも名前とか家族とか俺に関する記憶の大半とここに来た理由が思い出せないか」
 しかし、現実目を開くと少し記憶と矛盾してる部分があった。
……まず覚えてる限り草花はこんなにデカかったとは思えない。
 小さいものでも己の背丈ほどある雑草。まるで木のようだが幹がない。
「まったくわかんねぇなぁ……。 そもそもここからどうすればいいのやら」
適当に歩き回るか…いや、危険すぎるな。
それなら昼間のうちからここで出来ることをしたほうがいいだろう。
つまり……
「……結局、歩き回るのか」
 現代文明で生きてきた自分に体力はそんなにあるとは思えないが致し方ない。
 まずは食料かなんかを探すことにしようと立ち上がった瞬間。
ガサッという物音が聞こえた。
「!? ……なんだ? クマとか野犬じゃないだろうな……? せめてウサギとかであってくれよ……」
 しかし、その思いとは裏腹に音は徐々に大きな体躯のものだとわかるようになる。
 そして、音からしてもメキッバキッという明らかにクマなんかよりも巨大なものだと分かり、地響きまで聞こえてくるようになった。
「や、やば……逃げよう!」
 俺は震える足を無理やり立たせて木の根元に隠れた。
体を完全に埋めた瞬間、ズズーンという重い足音が外から聞こえてきた。
「(……あっぶねぇ、気づかれるところだった)」
 外にいる巨大生物はその後、何分か辺りをウロウロしていたが、すぐに何処かに気配を消した。
「……行ったか」
穴の外に出ると地面には身の丈ほどある獣の足跡が辺りにたくさん出来ていた。
「なんだよこれ、早いうちに森を出ないと……」
 そう思った瞬間、突然何かに捕まり体が宙に浮いた。
「捕まえたーっ!!」
「わあああっ!!? な、なんだっ!?」
 持ち上げた主は身体の方向をこちらに向けさせると、俺も相手の正体が分かった。
「(……女の子?)」
 目の前にいたのは耳と尻尾と手足はケモノものを持つ同い年くらいの見た目の女の子だった。
 それだけでも驚くのだが、なによりも姿が巨大すぎる…。
「お? 妖精かと思ったら人間だ。 ……人間ってたべれるの?」
「たべれない! 食べたら死ぬぞ!!」
「ええーっ!? じゃあいいや!」
 そう言うと彼女は俺を握っていた手を離すとそのままどこかに去っていった。
「……なんだったんだ今のは」
「よかったね、あの子真に受けちゃうんだよ。コボルドは頭が良くないから」
「っ!?」
 真上から聞こえてきた声に反射的に顔を上げると、突然ツタが体にまとわりつきそのまま上へ連れていった。
「な、なんだこれ!!?」
「本当にちっちゃいね君。こんな人間もいるんだ」
 そこにいたのは先ほどのケモノっ子と同じほどの大きさで肌が薄い緑色をした花飾りを長い髪につけた女性だった。
 俺はどうやら彼女の髪の毛に身体を絡められてるらしい。
「しかし、髪の毛で捕まえるなんて初めてかも。いつもならこういうツタを使うんだけどね」
「ひっ……」
 そういうと彼女の背後からモゾモゾと1本のツタが目の前で煽り立てた。
 その姿はまるで巨大な蛇やミミズのようにも見え俺は恐れ慄き、その様子を見るや彼女はケラケラと笑った
「お、俺をどうするつもりなんだ……?」
「そうね……食べちゃおうかな」
「……え?」
「そう、この蜜壺の中でゆっくりとね。 私、アルラウネの中はとっても気持ちいいわよ。だから心配しなくても知らない間にトロけちゃうから大丈夫」
 彼女はそう言って俺を腹部に移動させると、近くにあった袋のようなものが甘い香りを撒き散らしながら大きく口を開いた。
「それじゃ、いただきます♪」
 そして、ツタがスルスルと解けていき……
 捕まるものを失った俺はそのまま蜜の中にポチャンと落ちてしまった。
……
………
「(ダメだ……この香りはマズイ……)」
「(このままだと死ぬのに……気持ちよすぎて……何もできない……)」
「(なんで……こんなことになったんだ……)」
 粘り気の強い蜜の中でただただ動くこともできず沈んでいく。
 
 俺はもはや何も考えることさえ出来なくなり、そのまま意識を失った。
*****
一方、外では1人の少女が剣を携えて森の中を探索していた。
「……うう、怖いよ。 話下手とはいえ、せめて1人くらい仲間連れて来ればよかったなぁ……」
 そんな愚痴をこぼしながら草木を掻き分けていると目の前に一体のモンスターが現れた。
「わわっ!!? アルラウネだ……」
 しかし、相手はどうやら気がついていないらしくコックリコックリと眠りについていた。
「うーん、無駄な戦闘は避けたいし……そうだ。蜜壺だけ採取できないかな」
 少女は少しずつ近づきながら蜜壺に手を当てがう。
「んっ……」
「っ!?」
「……むにゃ」
「……ほっ」
続いて少女はツタを剣でなぞるように切り取り、こっそりとその場を後にした。
……
…………
「あー怖かったー!! まあとりあえずなんとかなったしなんとかなるよね! ……ん? なんか入ってる。 妖精かな」
 少女はそう呟くと蜜壺の中に手を突っ込みいれ、引き抜いた。
「……よ、妖精? にしては小さいような」
「……うう」
「わわっ生きてた!」
「……うう、ゲホッゴホッ!! た、助かっ……た?」
 目を覚ました少年は少女と目が合う。
 なお少女も巨大だった。
「う、うわああああっ!!?」
「だ、大丈夫!! 取って食べたりなんかしない……」
 クー……
「……お腹すいた」
「やっぱりいいいいいっ!!!」
「ち、違うって!! 大丈夫!! 大丈夫だってばああああっ!!!」
……
…………
 数分後、少女はカバンから麦パンを取り出し、小さく千切って少年に渡した。
「あげる、君もお腹すいてるでしょ?」
「あ、ああ。 ありがとう……」
  少女は礼を言われて少し照れると先ほど採取した蜜をパンで掬いながらモッモッと食べ始めた。
「ところで、ここはどこなんだ? 君もどうしてそんなに大きいんだ?」
「え? ここはファスフォレストだけど……多分私が大きいんじゃなくて君が小さいんだと思うよ」
「……だよな。 まあわかってたよ」
 少年はそう言って溜息を吐き、受け取ったパンをモソモソと食べ始めた。別にうまいもんではなかった。
「君はなんなの? 妖精じゃないみたいだけど変な格好もしてるし……」
「……こう見えても人間だよ。 んな妖精とか小人とかそんなファンシーなもんじゃない」
「じゃあ魔法かな。ミニマムとかあるし」
「さあ、俺はこの世界のことが全くわからん。 何にせよ異世界から飛ばされたんだろうな。もう色々あったからびっくりもしないよ」
 しかし、それを聞いた少女は目を丸くして驚いたような表情を見せた。
「ええっ!? 異世界から来たって……そんなこと……」
「そこまで凄い魔法は流石になかったか?」
「いや、あるんだけど……えっと、その……私勇者なの!!」
「……お、おう」
 突然のカミングアウトに反応に困る少年。
 しかし、少女は続けて話した。
「それで、その勇者っていうのは周期的にこの世界から選ばれる信託勇者っていうのと異世界から召喚される神託勇者が交互にくるの」
「……えっと、信託勇者と?」
「神託勇者」
「(ニュアンス同じじゃねえか)」
 少年は心でツッコミを入れたが表情には出さなかった。
「それで、それが俺になにか関係があるのか?」
「うん、あのね。 召喚で呼ばれるのは神に選ばれた勇者だけなの」
「ええ、俺勇者なんだ。 ……ん?」
「そう、私も勇者なの」
「……はぁ」
 あまりピンとこない。
「今までダブル勇者ってなかったのか?」
「そんなの聞いたことないよ。 ああ、きっと血筋だけで選ばれただけのヘタレで気弱な私じゃ頼りなさすぎて別の勇者である君が呼ばれたんだ……うぅ」
「そんな気落ちされても……。 俺だってアルラウネやコボルドに食われそうになったんだから。 っていうか召喚されて早々森の中だし体小さいしわけがわからない……」
「ああ……そうだったね。 もしかしたら魔法かもしれないから、とりあえず森を抜けよう。 確か次の村は魔導師の人がたくさんいるはずだし」
 魔法だの魔導師だのモンスターだの全くファンタジーすぎて着いていけない。
 そう少年は早々に思い始めていた。
 

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